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東京高等裁判所 昭和27年(う)2525号 判決 1952年9月16日

控訴人 被告人 安田国太郎

弁護人 井田憲次

検察官 軽部武関与

主文

原判決を破棄する。

被告人を罰金五千円に処する。

右の罰金を完納することができないときは金百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

原審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣旨は末尾添附の弁護人井田憲次の差し出した控訴趣意書記載のとおりである。

(控訴趣意に対する判断は省略する。)

次に職権を以て按じるのに原判決は被告人の各販売の所為を以て刑法第四十五条前段の併合罪として処断しているところ、本件の如き医薬品の無登録販売業の如きは単に一回の販売にとどまる場合においても薬事法第二十九条違反罪の成立することのあり得るのは勿論であるけれども元来法律はその違法な販売行為の反覆せらるべきことを予想しておるものと解すべきであるから数個の販売行為は包括的に一個の犯罪として処罰すべきであつて個々の販売行為に対して併合罪として擬律すべきものではないから原審はこの点において法令の適用を誤つた違法があるものといわざるを得ない。そしてかかる法令の適用の誤が判決に影響を及ぼすべきことは明らかであるから原判決はこの点において破棄を免れない。

よつて本件控訴は結局理由があるから弁護人の量刑に関する論旨に対する判断はこれを省略し刑事訴訟法第三百九十七条により原判決を破棄し但し当裁判所は本件訴訟記録並びに原審において取り調べた証拠により直ちに判決をすることができるものと認め同法第四百条但し書によつて更に本件について判決をする。

当裁判所の認定した罪となるべき事実は昭和二十七年三月十七日附起訴状記載の公訴事実と同一であるからこれを引用する右の事実を認定した証拠は原判決書の証拠として挙示しているところと同一であるからこれを引用する。

法律に照らすと被告人の所為は薬事法第二十九条第一項に違反し同法第五十六条第一項罰金等臨時措置法第二条に該当するところ所定の罰金刑を選択しその金額の範囲で被告人を主文第二項掲記のとおり量定処断し右罰金不完納の場合における労役場留置期間については刑法第十八条により主文第三項掲記のとおりこれを定め原審の訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条により被告人に全部これを負担させるべきものとし主文のとおり判決する。

(裁判長判事 中村光三 判事 河本文夫 判事 鈴木重光)

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